研究概要 |
本申請にかかる研究では、近年各国で行政改革の一環として進められつつある公私協働の現象を中心に、契約手法の実態的、法制度的な検討とそこで蓄積されつつある行政目的達成のための規範の実体を分析・整理するとともに、それらの法的コントロールのための制度と手法・その現状を明らかにする。わが国においては、PFI事業や指定管理者の制度のように、実務レベルでは、指定機関制度とならんで様々な契約手法が多用されつつあるが、一方で、そこで公共性を実現するための契約内容の実体的な内容・指定行為による相手方への規制内容、その法的な統制のための制度の構築、争訟方法の整備・拡充などの議論は、十分な展開をみせていない。一方、ドイツを中心とするEUおよびEU諸国においては、EUの公共調達法制の整備や共通市場政策の影響もあり、そうした現代的な行政契約現象(各種のKonzession, PFI, PPP行政主体間調達)をめぐる法的統制のための法制度の整備や争訟的な統制が進展しつつある。その中には、伝統的な、建設工事・物品調達・役務調達の分野でのいわゆる公共調達にとどまらない、様々な行政目的実現をめざした公私協働のための契約手法とその法的統制のための議論が含まれつつ、展開をみせている。また、単なるサービスの調達にとどまらない、行政目的達成のための手段としての内容拡張もなされつつある。 具体的には、こうしたドイツを中心とするEUの行政契約をめぐる実体法、争訟法制と裁判例の蓄積を、比較法的手法により調査分析する作業を通じて、日本における行政契約法制の内容的な充填と、争訟制度の拡張をめざすための基礎作業を行う。 本研究は、まさに以上のような伝統的な公共調達にとどまらない、新たな行政の契約手法の拡大を対象としながら、その法的統制のための行政法・その他の法分野による議論、法制度および裁判例の展開を、比較法的な手法により究明し、わが国における当該分野での法学的議論への知見を得んとするための作業である。
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