研究概要 |
適格組織再編成に関する7つの要件、すなわち、(1)従業者引継要件、(2)事業引継要件、(3)資産・負債引継要件、(4)事業関連性要件、(5)事業規模要件、(6)役員引継要件および(7)株式継続保有要件(規模要件と役員引継要件はどちらか一方を満たせばよい)のうち、アメリカ法には、(4)(5)(6)がない。(1)と(2)については、類似の要件として事業継続性(continuity of business enterprise, COBE)ルールがある。アメリカ法と比較すると(4)~(6)の基準の合理性が疑わしく思える。例えば、なぜ従業者や役員を引き継がねばならないのか、なぜ規模が異なったり、事業に関連性がなかったりすると非適格になるのか、説明することが難しいからである(アメリカではいずれも適格になりうる)。しかし、できる限り日本の合理性を探るとすれば、(1)(2)(4)(5)(6)のすべてを含めて、日本版COBEと捉えることができるかもしれない。すなわち、日本法でいう事業の継続とは、従業員や役員あるいは事業の関連性や規模が大きく変わらないことを意味しているという理解である。ただし、その理解が正しいかどうかについては引き続き検討が必要である。 さらに、100%株式保有というグループ要件については、連結納税および平成22年度改正で導入されたグループ税制の二つが、同じ基準をとっていることから、今後もこの数字で定着していく可能性が高い。つまり、100%の持分関係を構築すれば、他の法人グループとはまったく異なった扱いを受けることになる。見方を変えれば、100%グループの形成を法が後押ししているといえなくもない。もっとも、100%グループを構成するかどうか(それとも、例えば80%でとどめておくか)は、当事者が自由に決められることであるから、そのような選択権を納税者に与えることがよいかどうかについても、引き続き検討が必要である。
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