法人取得取引あるいは法人組織再編取引については、法人段階の課税と株主段階を分けてそれぞれについて考えた。特に、株主段階と法人段階でそれぞれ1回ずつ課税される現行制度を前提としつつ、負債(debt)と株式(equity)の差異について整理を行った。今日では、両者の差異が相対化してきて、投資家は自らの課税上のポジションに有利な方を選択することができる一方で、企業の方も、課税を考慮しながら、自社の資本構成に適した形で資金調達をする傾向にあることがわかった。それを前提に、立法論としては、当事者の選択の幅を狭くする方法を提案したが、この点についてはさらに検討を続ける。 組織再編成に関する課税繰り延べの根拠については、最近のアメリカ法(オバマ政権における改正提案)に示唆を求めた。アメリカでは、2010年度および2011年度の両年度にわたって、組織再編成における非適格資産たるboot税制の改正が提案された。内国歳入法典356条(a)によれば、組織再編成においてbootが交付された場合、(当該bootの市場価格を超えない範囲で)交換によって実現した利益が認識されるという「実現利益制限」が存在するが、改正提案では、bootの交付が配当分配の効果を有する場合、この制限の廃止が主張された。提案の理由は、課税繰延規制の強化であった。すなわち、US株主が、これまで課税されていない外国子会社の留保利益(E&P)を、課税されずに本国に送還する不都合を解消しようとしたのであり、課税繰延に対処しようとするアメリカ法の考え方は、わが国の制度を考える上で参考になった。
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