研究課題/領域番号 |
20530021
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
渡辺 徹也 九州大学, 法学研究院, 教授 (10273393)
|
キーワード | M&A / 法人説 / 組織再編成 / グループ法人税制 / 適格現物分配 / 法人課税信託 / 国際課税 / 資金還流税制 |
研究概要 |
1.平成22年度の税制改正により、グループ法人税制の導入に合わせて、新たに適格現物分配に関する課税制度が創設された。しかし、適格現物分配は、組織再編成の一類型であるにもかかわらず、適格組織再編成の種類として、完全支配関係がある法人間の現物分配しかない。また、合併や分割といった既存の組織再編成のように、支配関係のある場合の現物分配や共同で事業を営むための現物分配といったカテゴリーが用意されていない。さらに、適格現物分配では、事業の移転が前提となっている適格合併や適格分割とは異なり、個々の資産の分配が前提とされている。これらのことから、適格現物分配をグループ法人税制の一部として位置づけながら、そのすべてを適格組織再編成として扱うことは、理論的にはやや無理があるように思われた。 2.信託税制については、A社のなかにα部門があり、この部門に属する財産について信託を設定し、その受益権をA社の株主に交付された場合、分割型分割(法法2条12号の10)と考えることができ、またそれを前提として、法人税法上の要件(法法2条12号の11)を満たせば、適格分割型分割(法法2条12号の12)として扱うことができるのかという問題があるが、検討の結果、立法論はともかく、解釈論上は困難であるという結論に至った。 3.平成21年税制改正により、一定の外国子会社からの配当が親会社において益金不算入とされる制度(法法23条の2)を創設するに際して、わが国は居住地管轄に基づく課税権を手放して、海外からの資金還流を促す税制改正を行ったとされるが、結果として資金は還流されたのか、還流されたとしてその資金は国内の設備や雇用のために有効に投資されたのかという問題意識から学会報告を行い、暫定的な結論として、資金の一部が還流されていない可能性を指摘した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年度開始時点に設定した計画から逸脱することなく研究がおおむね良好に進んでいるため。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策としては、昨年通り、必要な文献を購入しつつ、LexisやWestlawといった電子ジャーナル等を通じた資料収集も同時並行して行う。また、九州だけでなく、関東あるいは関西の研究会等(全国規模の学会等も当然含まれる)にも必要に応じて積極的に参加して報告等を行う。さらには、法律事務所や会計事務所だけでなく、国の主催する説明会等へも出向き、実務家との意見交換を行う。 研究計画の変更あるいは研究を遂行する上での問題点は特にない。
|