研究代表者・田中孝男と研究分担者・木佐茂男は、本補助事業である裁判外行政紛争解決に関して、引き続き制度の実体、運用の調査と比較研究を進めてきた。研究代表者・田中は、2009年6月に開催された日本公共政策学会の分科会において、自治体における債権管理の現状と課題に関するセッションの司会を行った。そして、自治体と私人の間の債権債務(公法上と私法上のものを、とくに区別しない)に係る紛争処理に関する法制度の現状と運用の課題、解決策について研究と交流を行うことで、本研究に関する各論に位置する債権に関する行政紛争における解決のあり方についての研究・交流を深めた。また、研究分担者・木佐は、その所属する九州大学法科大学院付属の法律事務所(弁護士法人九州リーガル・クリニック法律事務所)が受任する事件にあって、最高裁判決(産業廃棄物最終処分場使用差止請求事件。平成21年7月10日第二小法廷判決・集民231号273頁)を得た。同判決が示す理論的な内容は、木佐が研究し、当該裁判の実践過程で展開した成果と一致するものではないが、木佐の活動が、このテーマの法解釈に関する最高裁の同判決を引き出し、判例理論の構築に資する貢献をなしたところである。さらに、木佐の研究論文(日本国内未公表)である「法の支配と自治体公務員法教育」について、その中国語版が台湾行政院の発行する『人事月刊』に公表され、国際的な評価を得た。また、木佐は、裁判外行政紛争解決なども含めた日本司法全般について定評のある書籍である『テキストブック現代司法』の改訂(第5版)に関して、共著者として、全体の3分の1以上(全361頁のうち130頁余り)にわたる部分について単独又は共同での改訂を担当し、この間の研究成果を、広く一般にも普及させることができた。
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