研究課題/領域番号 |
20530022
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
田中 孝男 九州大学, 大学院・法学研究院, 准教授 (70404001)
|
研究分担者 |
木佐 茂男 九州大学, 大学院・法学研究院, 教授 (30122039)
|
キーワード | 自治体争訟法務 / 苦情申し立て / 行政不服審査の審理の公正化 / 監査委員廃止と住民監査請求 / 公害防止協定 |
研究概要 |
本研究課題の研究期間の最終年度における平成22年度は、前年度までの研究を踏まえた総括的な成果をまとめた。 研究代表者・田中は、日本の自治体争訟法務の現状と課題に関する論文を発表した。この論文では、まず、行政上の苦情申立てに関する法的考察の不備を指摘した。そして、その上で、自治体では、行政不服審査事務と訴訟事務を担当する組織が同一であるために、行政不服審査による審理の公正さが担保されないこと、抜本的な組織改編が必要であることを明らかにした。さらに、別の論文で、政府・地方行財政検討会議が構想する地方自治法制の抜本見直しにあって、監査委員を廃止するという検討案について、住民監査請求制度がどのような影響を被るのかの検討が不十分であることを明らかにした。 また、研究分担者・木佐は、行政契約の一形態である公害防止協定に関する紛争解決について、裁判外紛争解決手続の機能不全と裁判実務をめぐる問題をまとめ、東アジアとの比較という点から、中国人民大学において「行政と私人が締結する契約の諸問題-公害防止協定を中心として」として講演・討論を行った。これにより、研究成果を広く内外に発表した。さらに、中国・司法部の王公義・司法研究所長と意見交換を行い、本研究期間満了後も本テーマにつき定期的な共同研究を推進すべきことを確認し、本研究に続く将来展望を得ることができた。 我が国では、政権交代に伴い、平成22年8月から政府・行政刷新会議において、行政不服審査法の抜本見直しの検討が始まっている。見直しの検討は、平成23年3月の東日本大震災の発生に伴い、中断しているようであるが、これらの研究成果が、政府における各種の裁判外行政紛争解決制度改革に対する一つのあり方を提供し、有意義な成果を挙げたと考えられる。
|