わが国における軍隊(自衛隊)の行動に議会(国会)がどのように関与するかの制度を整理し、かかる法制度が憲法と具体的な関係をもつか、持つとしたらどのような原理なのかを研究した。まず、現行の自衛隊の各行動と、それぞれについての国会承認の是非について現行法と立法経緯を整理し、国会の関与の程度と自衛隊の行動の指揮権に具体的な関係があるかを検討した。一般にシビリアン・コントロールが国会関与の根拠とされるが、憲法的意義は不明確であり、防衛出動にはついての憲法原理が係わるものの、それ以外の行動に国会の承認を要するか、いかなる関与が適当かは憲法問題とは言い難く、立法時の政治状況で決せられるとの知見を得た。しかし、個別法で国会承認を要求する法伝統が形成され、自衛隊の海外派遣には国会承認を要する法原理が熟成したとみるべきで、恒久法の論点を提供するものと思料する。次に、日本国憲法には国会と軍との関係を示唆する規定は一切ないため、自衛隊(軍)の行動に国会承認を要するとの法原理は法伝統に求められるかを考えるため、戦前の立憲主義での軍と議会の関係を観察した。そこでは軍の指揮権は統帥権として天皇の大権に属し、議会は勿論、国務大臣でさえ関与できないとの憲法原理が確立していた。議会承認を要件とする議論はついぞ憲法学では議論されなかったと観察される。この統帥権が憲法で与えられたというより憲法以前にすでに慣習として確立していた。しかしその範囲は不明であり、軍国主義のなか解釈と運用で議会などの政治が関与する場が排除されていった。この反省の契機が国会関与の法制度につながる要素があったのではないかと考えた。
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