キューバは、その憲法に社会主義体制をとることを明記し、立憲主義に基づく資本主義体制を維持するその他のラテン・アメリカ諸国と政治体制を異にする。このようなキューバ社会主義憲法の形成過程を、キューバの独立時からの憲法史に照らして考察し、キューバの社会主義憲法を理解するためには、ラテン・アメリカにおける立憲主義の歴史と、社会主義法の分析という両面からの研究方法が必要となる。 キューバ革命後に成立した社会主義憲法は、いわゆるスターリン憲法と呼ばれているソヴィエト憲法に多大な影響を受けていることは間違いない。しかし、キューバ革命の性格を反映し、より大衆参加的な性質を帯びており、徐々に共産党支配が強化されていった。それゆえ、一方では、革命がこのような大衆参加的性格を帯びていたということは、一面では、キューバ立憲主義の伝統を社会主義体制の維持のために利用したということも意味する。 社会主義諸国の崩壊とその後のソヴィエト連邦自体の解体は、キューバの社会主義体制にも衝撃を与えた。民主化を求める国民の運動に対して、体制維持のために社会主義体制の維持を憲法に明記すると同時に、一定の経済改革を行わざるを得なかった。そして、もはや社会主義イデオロギーによる体制の維持は、困難になり、ホセ・マルティに代表されるキューバの立憲主義の伝統を援用せざるを得なくなっており、大規模な人権侵害も困難になりつつある。近い将来、キューバの民主化とアムパーロ制度の採用を含む憲法改正は、避けられないと考えられる。
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