(1) 研究第2年度にあたり、人工公物に関する法整備が進展しているドイツを8月に訪問し、研究者と意見交換を行い、行政実務の実態を検証した。これによって、前年度、公法学会開催で実現できなかったプログラムを実現することができた。基本法制として、道路法に代表される、公用開始に関する法システムを中心に、両国制度を比較分析した。前年度に進めた文献研究を基礎に、日独の公共施設管理法システムの全体像を比較法的に解明すべく、ドイツ公法研究者と面談を行った。 (2) (a) ドイツの国土法制・都市計画に詳しい、ハイデルベルク大学のシュミット・アスマン名誉教授とハイデルベルクで面談し、近年の施設法制の発展を中心に、基礎自治体と州・連邦との関係を、施設管理の視点から議論した。その結果、複数の法制、特に諸計画問の調整法理の進展にドイツ法の特色があることが判明した。 (b) コンスタンツ大学のハンス・クリスティアン・レール教授とは、ドイツの道路法、河川法、自治法の基本的な仕組みを中心に、相互の連携関係、自治体との関係、市民との協力関係をめぐる法律問題を論じ合った。とりわけ、ドイツにおけるプロジェクト変更に関する法制を中心に議論し、中でも計画策定手続と計画変更手続の異同について意見交換を行った。そうした議論の中から、ドイツの規範審査訴訟が上記法制の監視制度として果たしうる役割に議論が進展し、そうした訴訟をドイツで必要とした制度導入時の議論が日本法にとって参考になることが判明した。具体的に述べれば、判決の効力の範囲、後の行政訴訟との関係(遮断的効力)、計画維持に関する判例法理の進展である。 上記のドイツにおける研究成果は、日本法、特に現在議論されている計画訴訟制度の整備にとっても極めて重要な知見を提供する。ドイツの制度導入時の議論は日本でも充分に分析されていないものである。こうした成果は本年、自治研究誌に公表する予定であるため、これにより海外研究の成果を広く還元する。
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