(1)2年間にわたり実施した比較法研究、国内運用調査をふまえて、最終年度である3年目には研究成果をとりまとめた。まず、前年度までに分析できなかった部分、具体的には、公用廃止に伴う移転措置、代替措置制度・運用に関して、文献を収集し、国内法・外国法に関して補充を行った。今回の研究成果に対する社会的な需要は高く、以下に示すような政府の審議会において、立法や基本計画の策定等において研究成果を社会還元することができた。 (2)(a)本年度に入り、特にわが国における少子高齢化に伴い、買い物難民などの出現が注目を集め、そうした市民のために、例えば、交通手段を整備する必要性が強調された。法律のレベルでは、交通基本法の制定作業が本格化し、国土交通省に設置された審議会に唯一の法律専門委員として参画した。交通権を正面から規律しなかったものの、国や都道府県による広域的な支援施策等により、交通手段から切り離されないで生活を送るための交通基盤整備が法制化された。今回の研究成果を立法に還元することができた。(b)さらに、持続可能でエコな都市整備を標榜して、国土交通省に都市計画の小委員会が設置され、委員として参画した。ここでは、エコ・コンパクトシティーを中核的な概念とする都市整備基本方針が議論され、公共施設整備の今後のあり方、特に選択と集中に視点を置いた、公物整備なども議論された。ここでも、本研究の成果を社会還元した。 (3)危機や災害に強い都市作りをテーマに、災害対策基本法の改正を視野に入れた審議会である、内閣府中央防災会議において、唯一の法律の専門委員として議論に参画した。避難措置の多様化に重点を置きながら、災害に強い社会インフラの整備も併せて議論した。研究成果は上記法律改正に反映される予定である。2010年度には、政策研究をテーマとした15巻のシリーズ企画の一環として、政策実施に関する著作を公刊したが、その中にも本研究の成果は含まれている。
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