研究概要 |
本研究は、資産の交換・買換えの土地税制の課税繰延べ規定の問題をアメリカ連邦所得税制との比較法の角度から分析したものである。我が国においては、特に土地税制の課税繰延べは、たんに政策的手段とのみ考える傾向が強かったという経緯もあってその法的根拠という観点からはほとんど議論されてこなかった。そこで、資産の交換・買換えの土地税制の課税繰延べの理論的根拠をアメリカの裁判例、通達などを手がかりに考察した。結論として、土地税制の課税繰延べは組織再編税制と同様の投資の継続性がその理論的論拠におかれていることを明らかにした。そのうえで、課税繰延べの濫用を防止するために、土地税制の適用要件に着目し投資の継続性の観点から理論的検討を試みた。以上の考察から、現行税制においては次のような見直しを行うべきであると考える。 1.所得税法58条の固定資産の交換の特例においては、不動産の同種の要件はきわめて緩やかであるといえる。そのような問題に対処するためにも、投資の継続性の観点から不動産の同種の定義を限定的に定めるべきである。例えば、代替的な基準として動産に適用されている減価償却資産の分類基準を不動産に適用するといった方法を検討する意義があると思われる。それにより、不動産の同種の要件に絞りをかけることが必要である。 2.また、所得税法58条の交換要件については、アメリカのセーフ・ハーバー・ルール(safe harbor rule)のように、その代替資産は交換譲渡資産の譲渡の日以後45日以内に決定されること,交換取得資産は交換譲渡資産の譲渡の日以後180日以内までに取得することなど、一定のルールを定めるべきである。 この研究成果は、『資産の交換買換えの課税理論』(拓殖大学研究叢書)として本年7月頃に中央経済社から刊行する予定である。
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