エコロジー憲法原理の要素としての「世代間公正」と憲法という問題について、2009年度においては「子どもの権利」に即して、ドイツ連邦共和国基本法の改正に関するさまざまな議論を見るという作業を行うこととなった。 その議論のなかには、世代間公正によって子どもに対する選挙権の付与を根拠づけるものもある。ドイツ連邦議会では、近年繰り返し、この問題に関し法案の提出や専門家に対するヒアリングなどが行われていることを知ることができた。なおこの議論は、日本における憲法改正手続法の制定に伴う法制的整備の一環としての公職選挙法改正による選挙権付与年齢の引き下げに関する議論とのかかわりという意義をも有するものであった。そうしたこともあり、ドイツにおける未成年者選挙権論について、本研究の一部として研究成果をまとめることを考え、勤務大学学内紀要に投稿申し込みをしたが、遺憾ながら執筆には至らなかった。 世代間公正の観点からするドイツ連邦共和国基本法の改正に関する議論としてはさらに、家族条項であり親の権利について規定している基本法6条に、子どもの権利に関する新たな規定を追加するかどうかという問題についても、連邦議会で法案の提出や専門家に対するヒアリングなども行われていることを知ることができた。この問題も、子どもの権利条約の国内法化の課題という側面と共に、世代間公正の基本法規定化の課題という側面もあることが知られた。 2009年度の研究実績は、申請書記載の二年次の計画の忠実な実施からは展開を見せているとは言えるのだが、もとより研究の全体構想の一部としての本質を失わず、また2009年度以降の計画として記載しているエコロジー憲法構想と民主制の憲法原理との緊張関係という課題について、未成年者選挙権論と民主制の緊張関係に即して実施しているとの自己評価が可能である。2010年度においては、上記子どもの権利に関し研究成果の公表に結びつけたいと考えている。 なお2009年度の研究成果のうち、下欄記載のものは、具体的には核兵器廃絶条約案に関する「書評」であるが、核兵器問題はエコロジー問題の一部であることのみならず、条約案に対する「新しい国際法観を切りひらく」との評価を、筆者自身が翻訳・紹介した世代間責任に関するユネスコ宣言の意義という観点から行っており、本研究の一部と考えているので、記載した。
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