本研究は、ドイツ語圏諸国のエコロジー憲法構想をその先駆から今日に至るまで総合的に跡づけるとともに、その理論的な意義と問題点を考察することを直接の目的とし、平成22年度の研究実施計画としては、ドイツにおいて環境問題や年金問題などをめぐって世代間公正というテーマが憲法問題として重要性を増大させつつあることについて、その展開をフォローすることを第一の課題とした。 それについて、2010年7月開催の「子どもと法」研究会で「未来の世代と憲法」との標題の研究報告を行い、つぎの点を明らかにした。1.法・法学の歴史において未来の世代は、近代社会の幕開け期および第二次大戦後の核時代到来期という、人類史の転換期に登場しているが、いままた未来の世代がみたびその姿を現しつつあること。2.今日につながる未来の世代への言及は、地球規模の資源・エネルギーや環境の問題をめぐる環境権的発想から出発し、法のエコロジー的新志向を経て、「未来の世代に対する責任」から「未来の世代の権利」の主張に現れていること。3.そうした議論のドイツ語圏における先駆としてペーター・サラディンのそれを位置づけることができるが、近年のドイツ、スイス、オーストリアの憲法動向や国際宣言にその定着を見いだしうること。
|