本年度は、本研究の最終年度であり、研究の第一の目的として、租税行政立法の統制のあり方を検討することを掲げていた。租税法の分野では、毎年度の立法府による税法改正がなされると、これに関連する命令等(政令、省令、通達等)も合わせて制定・公表されることが多い。租税法律自体には、抽象的な要件のみを記述しておき、その細則については、施行令、施行規則等に一般的に又は個別に委ねられ、或いは執行上の指針が通達において示される傾向がある。税務上、これらは概して従っておくべき基準として機能している。そうであれば、かかる命令等を租税法律主義の要請に従い民主的にどのように統制すべきかは、我が国でももっと問われてよい。 その第一の手段となりうる意見公募手続の根拠法たる行政手続法は、税制改正に伴う命令等の改正・修正を適用除外としているところ、本研究の調査から、現に命令については結果の公示のみ(適用除外)とされる一方で、租税に関する通達が、時折行政手続法上の意見公募手続にかかっていることが判明した。 それぞれの重要性に鑑みれば、これは理想とは逆の帰結であるとの仮説の下で、米国法の租税に関する命令等の統制過程について、米国の行政手続法上の要請を踏まえて考察するとともに、命令等で示される執行府の解釈に対する裁判所の敬譲の動向について研究を進めた。その結果、裁判所が、意見公募手続を経た行政解釈を尊重する傾向があることをつきとめ、それが、米国財務省に対し、意見公募手続を経る誘因となっている可能性について指摘した。 行政手続法の改正による同手続の適用範囲の拡大による対応も一案ではあるが、かような間接的な形での、しかし十分に意味のある動機付けについては、租税法律主義の下、単に行政解釈の違法・誤りかそうでないかという問いを続けるよりも、現実を踏まえた能動的な態様での民主的統制の手法として検討に値するとの結論を得た。
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