研究概要 |
本年度は、東アジアにおける市場経済化にともなう法的諸問題の中でも、中国独占禁止法の運用動向を中心としつつも、中国を取り巻くWTO紛争についても研究を進めた。その成果として、2010年5~6,月、公正取引協会、国際商事法務研究所等にて企業実務家向けに「中国独占禁止法-企業結合規制事例と民事判例の分析-」と題する講演を行ったほか、2010年10月には、アジア国際法学会日本協会国際法研究者・実務家勉強会にて中国人民元為替レート及び中国による鉱物資源の輸出制限に関連するWTO紛争に関する講演を行った。また、2011年3月には、中国による鉱物資源の輸出制限のWTO法適合性を分析した論文及び中国による出版物等の貿易権制限に関するWTO紛争の評釈を1本ずつ公表した。さらに、2011年3月、中国・北京を訪問し、商務部、国家工商行政管理総局、最高人民法院、中国政法大学、現地法律事務所等の担当官・専門家に対し中国独占禁止法の運用動向に関する聞き取り調査を行った。この結果、中国独占禁止法はこれまで企業結合審査のみが活発であったが、徐々にカルテル及び市場支配的地位の濫用の事例が現れてきたこと、並びに独禁民事訴訟に関する司法解釈起章状況が明らかとなった。これらの成果は、研究代表者の個人プログで適時に公表しているほか、現在、『中国独占禁止法-逐条解説と最新動向-』と題する書籍の準備を進めているところであり、同書は三省堂より近刊予定である。
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