本年度は、中国独占禁止法の運用動向及び中国における政府と市場の関係をめぐるWTO紛争を含む国際経済法上の現象についても研究を進めた。その成果として、2011年6月に学術論文「中国独占禁止法-施行後3年の法執行の概観と今後の展望-」及び同「中国による補助金供与の特徴と実務的課題-米中間紛争を素材に-」を、同年12月に同「WTO加盟後10年を経た中国における法制度及び事業環境」をそれぞれ公表した。また、2011年10月30日、日本国際経済法学会20周年記念大会共通論題報告「中国における市場と政府をめぐる国際経済法上の法現象と課題-自由市場国と国家資本主義国の対立?-」を、2012年1月19日、キャノングローバル戦略研究所・中国研究会において研究報告「中国における『市場と政府』をめぐる米国等の認識と国際経済法上の法現象」を、2012年2月24日、公正取引協会外国競争法研究会及び国際商事法研究会国際通商法研究会にて講演「中国独占禁止法-最新動向を中心に」を、それぞれ行った。 さらに、2011年3月、中国・成都を訪問し、成都市工商行政管理局及び物価局の担当官及び西南財経大学法学院の研究者に対し中国独占禁止法の運用動向に関する聞き取り調査を行い、かつこの4年間の研究成果の報告として同法学院において「中国独占禁止法の立法過程と施行後の発展-日本独占禁止法の観点から-」と題する講演を行った。 この結果、中国独占禁止法は施行当初、企業結合規制のみが活発であったところ、徐々にカルテル及び市場支配的地位の濫用の規制事例が現れてきたことが明らかとなったほか、中国における「国家資本主義」とも称される政府の市場への積極的関与が経済摩擦を生んでおり、国際経済法上の重要な課題を突きつけている現状が明らかとなった。これらの成果は、研究代表者の個人ブログで適時に公表しているほか、現在、『中国独占禁止法-逐条解説と最新動向-』と題する書籍の準備を進めているところである。
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