研究課題/領域番号 |
20530037
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
坂元 茂樹 神戸大学, 法学研究科, 教授 (20117576)
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研究分担者 |
五十嵐 正博 神戸大学, 国際協力研究科, 教授 (70168102)
柴田 明穂 神戸大学, 国際協力研究科, 教授 (00273954)
濱本 正太郎 京都大学, 法学研究科, 教授 (50324900)
林 美香 神戸大学, 国際協力研究科, 准教授 (60362810)
玉田 大 神戸大学, 法学研究科, 准教授 (60362563)
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キーワード | 交渉 / 海洋法 / 国際投資法 / 国際裁判 / 国際環境法 / 名古屋会議 / 法源論 |
研究概要 |
本年度は、個別分野における「交渉」の多様化・多機能化の分析結果を総合した上で、非裁判手続としての「交渉」(狭義の交渉)を超える多くの交渉機能を分析し、交渉プロセスにおける基底的規範の役割を明らかにした。 第1に、多国間環境条約交渉プロセスの分析に関しては、遺伝子組換え生物(LMO)に起因する生物多様性損害に対処するための新条約交渉を検討した結果、主権国家の合意の自由(条約締結権)を実質的に制約する規範的前提が存在しており、さらに、科学的妥当性(based on sound science)を確保すべきであるという規範が交渉国間で共有されていることを明らかにした。 第2に、日本の投資法政策及び交渉プロセスの分析を行った結果、2002年を分水嶺として変化が見られ、その背景として多数国間投資協定(MAI)の失敗、WTOドーハラウンドの停滞、貿易収支の伸び悩みと資本収支の急増などがあることを指摘した。他方、2000年代初頭はすでに投資協定仲裁の影響が明確になりつつあり、各国とも投資協定の締結に慎重になりつつあり、交渉相手国からの要求も厳しいものになりがちであるため、日本のBIT/EPAに一貫性が見られなくなっていることが明らかになった。 以上のように、「交渉」の多機能化を実証分析することにより、一見すると規範考慮とは異なると捉えられる「広義の交渉」プロセスにおいても、交渉を枠づける基底的な規範概念が有効に機能していることが明らかになった。この結論は、今後、他分野の実証研究においても極めて有効な分析ツールになると考えられる。
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