本研究の目的は、現代国際法における武力不行使原則の法的構造を明らかにし、その成果を国際的に問うことにある。申請者のこれまでの研究によって、国連憲章2条4項における武力行使の禁止とは、国連の目的と両立しない武力行使は許されないということが出発点にあり、それは、国連の目的と両立する武力行使は許されることを意味するものと理解されていたことが明らかとなった。これに対し、現在では、武力不行使原則とそれに対する例外との関係については、厳格な禁止と明確な例外(国連安全保障理事会による強制措置および武力攻撃に対する自衛権)という捉え方が、言いかえれば、こうした明確な例外以外の武力行使は許されないと理解することが一般的である。こうした変化、あるいは少なくともこうして変化した形で理解されていることについて、(1)そうした変化は実定法上生じたと言えるのか、(2)そのことはどのような意義を有するのか、を明らかにしようとするものである。
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