研究概要 |
本年度は引き続き,生殖補助医療から生まれた子の親子関係の問題、同性婚や登録パートナーシップに関する比較実質法の調査を行うとともに,これ以外の新たな身分法制度で国際私法方法論へのインパクトが考えられるものについて調査の範囲を広げた。そして、これらの新たな実質法上の法制度に対する国際私法上の扱いについての方法論からの理論的検討を本格化させていった。本年度は研究全体の総括に向けた検討を主に行った。 本研究においてはヨーロッパにおける議論が参照されるが,そこではEU法からの影響,とりわけいわゆる「相互承認原則」からのバイアスが見いだされる。そこで、「相互承認原則」という観点から、EU法及び諸国の国際私法における新たな動向の調査を行った。具体的には、欧州人権裁判所の2007年6月27日のWagner v.Luxembourg事件判決の調査を行った。このほか,欧州人権条約6条の公正な裁判を受ける権利を根拠に,条約がなければ外国判決を承認しない従来の法制度を,それでは欧州人権条約6条違反になるとして外国判決を条約なしに承認すべきであるとする,ロシアの裁判例についても検討を行っている。また、代理出産で生まれた子の親子関係の確定をめぐる最決平成19年3月23日について、国際私法方法論の観点から検討を行い、論文として公表した。
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