(1)日本の労働社会や労働法の歴史に関する既存の研究の文献・資料の検索・収集を国内の図書館、資料センター、出版社等を通じて行った。法学文献のほか、歴史学、社会学、経済学などの文献・資料の収集にも重点を置いた。 (2)(1)で収集した文献・資料を整理・分析し、既存の研究のサーベイを行った。ここでは、瀧川政次郎『日本労働法制史』社会問題講座8-12巻(改造社、1926-27)、牧英正『人身売買』 (岩波書店、1971)、牧英正『雇用の歴史』(弘文堂、1977)、矢野達雄『近代日本の労働法と国家』(成文堂、1993)などのほか、法学、歴史学、社会学、経済学などの諸分野における既存の研究をもとに、これまでの日本における労働史研究の成果をとりまとめた。研究を進めるにあたり、経済学の観点から労働史を研究している中村尚史准教授(東京大学)のアドヴァイスを受けた。 (3)これらの文献・資料をもとに、本格的な歴史研究のための準備的研究を行った。 (4)これらの作業と平行して、フランスやアメリカの労働社会や労働法の歴史に関する文献・資料を収集した。 (6)国内で開催される労働社会や労働法のあり方に関する学会、研究会、講演会などに参加し、情報を収集した。 (7)以上の研究・情報収集により得られた成果はなお中間的なものであり、歴史研究として公表するには至っていないが、そこで得られた知見は、下記11.の研究発表のなかで部分的に生かされている。中闘的な成果の大要を述べると、(1)日本の雇用・労働は歴史的・社会的条件に規定されつつ多様に変遷してきたものであり、かつてから「月本的」という特定の性格(例えば「終身雇用」的・「共同体」的な性格)を一貫してもってきたものではない、(2)現在の臼本の雇用・労働の特性(欧米の雇用・労働との相違)の起源は、江戸期中盤から明治期以降の「近代化」のプロセスの違いに求められる、という点にある。
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