研究概要 |
21年度は,ヨーロッパ・ドイツにおけるIT産業及び電力・ガスエネルギー産業における市場支配的地位の濫用規制をめぐる理論,最近の事例を検討した. まず,市場支配的地位の濫用規制の最近の重要な理論的展開として,「排除行為」をめくる議論が,日米欧において活発化している.最近の議論を念頭に置きながら,かかる「排除行為」に関する事例を検討した.とりわけ,ヨーロッパでのリベートシステムの不当性が問題になった「ブリテッイッシュ・エアウェイズ」ケース,ウィンドウズOSの情報開示,メディアプレーヤーとウィンドウズOSのバンドリングの不当性が論点となった「マイクロソフトケース」を検討した.さらに,ドイツでは,強制ライセンスと競争法の問題に関するケース,競争者を排除するような搾取的高価格設定を問題とする事例を分析した.また,ドイツでは,電力エネルギー産業に対して業法及び競争法の適用が見られ,そこでは,参入拒絶の問題と参入に関する料金の問題が生じている.これらの事例では,従来の「不可欠施設」理論の考え方に即しながら,支配的な地位の濫用行為に対しては競争法上厳格に捉えられているといえる. 事理検討,理論的検討に基づき,「不可欠施設理論」の意義・今後の展望については,不可欠施設理論は,ヨーロッパでは一定の意義役割を果たしつつあると考えられる.そして,その適用範囲は,「不可欠施設」から「必要な施設」へと拡大つつあり,むしろ厳格な規制が行われ,市場支配的地位の濫用行為の一類型として重要な意義を持つようになっている.
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