研究概要 |
本研究では,規制緩和に伴い,寡占化・独占化が進展する経済社会における競争秩序及び規制の在り方を明らかにすることを目的としている.いわゆる公益産業及びIT産業に共通の問題として,ドイツ・ヨーロッパ競争法を手がかりに「不可欠施設へのアクセス」の問題及び市場支配的地位の濫用規制を検討対象として,近年重要と思われるドミナントな事業者に対する規制の在り方を考察する. 公益産業,とりわけ電力エネルギー,ガス分野に関しては,ヨーロッパ,特にドイツにおいても競争の導入は容易ではなく,十分活発な競争が行なわれているとは言い難い.エネルギー市場は,強度に垂直的統合されており,エネルギー価格の高騰は国民経済的問題として扱われている.ドイツでは,2007年の競争制限防止法の改正により,エネルギー産業に特化して,高価格,いわゆる搾取濫用規制が新設された.改正の趣旨目的を検討し,その適用事例の分析を行なっている.また,ヨーロッパのエネギー産業では,構造的措置の可能性も検討されている.いわゆる構造的アンバンドリング(分離)であり,かかる構造的アンバンドリングをめぐる政策的理論法的な問題を整理し,「価格濫用規制と電力事業におけるアンバンドリング」として公表した.さらに,ヨーロッパにおけるマイクロソフトのケース(抱合わせ・ライセンス拒絶),ブリティッシュエアウエイズ及びインテルのケース(リベート)等を分析し,近年活発な排除行為に対するヨーロッパの濫用規制の理論・運用を検討している.寡占化が進む経済社会において濫用規制は一定の役割・意義を持つと分析している.
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