平成20年度は、3年間の本研究の初年度に当たるため、研究全体の構成を念頭に置きつつ、憲法上の婚姻および家族の制度的保障と関連の深い社会保障分野である児童手当、親手当および親期間、年金制度における育児期間の年金算入および離婚時の年金分割と遺族年金、2008年介護保険改革などの領域に関する連邦議会立法資料、政府資料、連邦憲法裁判所判例、コンメンタールなどの専門書を中心に必要な文献資料を渉猟し、入手した。 その上で、具体的な領域の分析としては、まず児童手当制度について近年の改正動向をレヴューした結果、すでに拙稿で発表していた1996年の所得税法による社会保障給付としての児童手当と税の扶養控除との一体化によるハイブリッド型の新制度については、その後の98年の社会民主党と緑の党/連帯90の左派連立政権下においてもその基本構造は変化せず、その後の2005年からの大連立政権時を通じて現在に至るまで竪持され、水準の引き上げが図られ、政党の別を超えて完全にドイツ社会において定着していることが確認された、 これに対して、キリスト教民主/社会同盟の政権下で1986年から導入された育児手当および育児休業制度は、その後の左派政権の時代を経て大連立政権下で2007年から施行された親手当および親期間制度としてその性格を大きく変質させてきた。そのあり方をめぐる議論の中から、この領域では育児と就労との両立、主婦婚の社会的評価や公的支援のあり方をめぐって、様々な主張がせめぎ合いつつなお変化している過程であることが確認された。 また、重要な介護保険制度改正となった2008年改正の内容についても分析を行った。
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