3年計面の2年目に当たる平成21年度は、まず、第1次家族法改革により導入された年金分与制度について、導入の背景やねらい、その後の運用と憲法裁判所の判例による修正、さらには2009年の年金分与構造改革法による全面的な見直しの内容の分析を行った。 次に、昨年度主に取り扱った親手当および親期間法においても同じ政策の展開が見られるが、伝統的に子ども、とりわけ3歳未満児については家庭における育児の支援を重視してきたキリスト教政党が、近年、それと並んで保育施設の拡充を通じて子育てと就労の両立支援に大きく転換を図ってきていため、その具体的な施策である児童通所施設(保育所、幼稚園)の拡充についても、その背景や目指す保育の社会化と家族機能の調和のあり方について文献を中心に調査した。 これらの事前準備の下、予定通り、ドイツ(ベルリン、ボン)への現地調査を実施し、最近の親手当/親期間制度、保育施設の拡充などの背景にある家族観や家族政策の理念と政策方針に関し、キリスト教民主同盟(CDU)、社会民主党(SPD)、運邦政府、ドイツ家族連盟(DFV)等におけるインタヴュー調査と資料収集を行った。さらに、現地で、社会法、社会政策の研究者を訪問し、意見交換と資料収集を実施した。 加えて、連邦政府の直近の家族政策全体の振り返りと評価を行っている『第7次家族報告』を入手し、その分析に着手した。 本年度は学部長職の最後の年で大学用務と訪独調査が重なったため、調査分析結果を論文にとりまとめる時間がなく、また社会扶助と求償権の課題については突っ込んだ分析を行うことができなかったため、これらについては平成22年度に集中的に実施したいと考えている。
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