これまでに、3回の研究会を開催し、雇用終了等に関する日本、イギリス、ドイツ及びフランスの各法に関する検討を行い、その成果の一部については論文として公表してきた。 まず、わが国の無期労働契約における解雇、有期労働契約における解雇や辞職及び期間満了による雇用終了、及び辞職・退職、並びに企業倒産時における雇用終了に関する判例の動向について整理し、その特徴及び問題点について議論した。その検討の具体的な成果として、下記の小宮論文及び根本論文を公表した。 次に、解雇の金銭賠償につきドイツにおける地位確認判決に代わる金銭による解決制度の実際的運用状態について議論し、それがわが国に適用可能であるかどうかについて検討した。また、イギリスにおける補償裁定額と基礎裁定額の法的性格についての議論し、逸失利益の保障と職の喪失が必ずしも同質ではないのではないかという議論を展開した。ただ、欧州諸国における金銭補償の額の算定に際して、その方法や手続は様々であるにもかかわらず、多くの場合、勤続年数を算定の重要なファクターとしていることなどから、職(収入源)の喪失以外の補償額算定における要素及びそれらに対する法的評価のあり方については、未だ解明されていない点が多いことが改めて明確になり、今後とも本研究において継続的に検討する必要があることを確認した。 また、企業の組織変動と解雇の問題に関連して、国内においてもIBM事件判決をはじめ、重要な法的論点を含んだ事例が見られたことから、それらについて議論し、その成果は、下記の本久論文として公表した。企業倒産時の雇用終了については、わが国においては、未だに研究の尽くされていない点が多く、フランスにおける企業倒産時の解雇手続に関して制度及び判例を整理するとともに、わが国における問題点を議論し、その成果として、下記の戸谷論文を公表した。
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