本年度は、研究会を1回開催し、わが国における有期雇用契約に関する厚生労働省の研究会の動向をにらんで、ドイツの有期労働契約の法制に関して研究報告・検討をした。あわせて、欧州連合の改正事業譲渡指令及びイギリスの2006年TUPEが事業譲渡における労働契約及び雇用関係上の権利・責任の譲渡企業から譲受け企業への承継に関し、譲渡企業が倒産手続き下にある場合、どのような処理をしているのかについて検討する報告を行った。 さらに、前年度の研究会の打合せに従い、小宮がイギリス、根本がドイツの雇用終了に関する現地調査を実施した。小宮現地調査については、倒産手続下にある企業の解雇について調査を行う必要があったため、当該分野を研究している、協力研究者の戸谷が随行し、ロンドン及びニューカッスルにおいて弁護士や労働組合幹部からの聞き取り調査を行った。また、根本現地調査については、ブレーメン大学、フンボルト大学、ボーフム大学において、聞き取り調査、討論を行った。 なお、予定していた本久によるフランス現地調査については、事故のため、実施できなかったので、翌年度に持ち越して実施することとした。 今年度の研究を踏まえて、まず子会社従業員に対する親会社の責任に関する問題を中心として企業再編時の労働関係について後記の本久論文を、またいわゆる整理解雇及び経営危機状況下における退職の問題について根本論文を、前記TUPEを中心としたイギリスにおける企業倒産手続下の事業譲渡と労働者の保護について小宮論文を、それぞれ発表した。
|