研究概要 |
本研究の目的は、近年、大きな問題となっている医療過誤の防止策について、医療過誤に対する法的対応の在り方に関する比較法的研究を基礎として、わが国の医療過誤に対する刑法的対応の在り方を検討するとともに、現在厚生労働省において議論がなされている医療事故の原因を究明し再発防止につなげるための新しい制度枠組みについての検討を行うことを通じて、医療過誤に対する刑法的対応の在り方について、解釈論的研究・比較法的研究・政策的研究を併せた総合的研究を行うことにある。具体的には、(1)過失犯論の解釈論的研究、(2)医療過誤に対する法的対応の比較法的研究、(3)医療過誤の防止のための制度論的・政策論的研究の3つを柱としており、平成22年度においては、研究のまとめの年として、わが国の刑事医療過誤事件に関する判例を総合的に検討するとともに、比較法的研究として、アメリカ、イギリス、ドイツを中心とした諸外国の医療過誤に対する刑法的対応の比較研究を行った。その結果、医療過誤に対する刑事責任の追及ばどの国においても行われており、これをどのように限定するかについて問題関心が共有されていることが明らかになった。さらに、制度論的・政策論的研究として、消費者庁で行われている事故調査機関の在り方に関する検討会における議論をも参照して、これらの知見に基づき,今後のわが国の医療過誤に対する刑事法的対応の在り方について検討を行い、研究のとりまとめに務めた。研究成果については、今後、論文の形で発表していく予定である。
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