平成21年は、グローバルな水危機の問題について調査研究を行った。 まず、現地調査として、いわゆる地球温暖化の影響が著しく現れているとされるグリーンランドを訪れ、氷冠(ice cap)の融解現場を調査し、カンゲルルススアーク資料館において資料収集をし、現地の居住者にインタビューを行った。それらによると、世界的に話題になるかなり前から氷冠の融解が見られ、危機状況を認識していたが、近年、その度合いが加速している。 つぎに、以上の氷河の崩壊・後退等によって生じる水危機の問題について調査研究を行った。 第1に、環境犯罪は水の危機を激化するおそれがある。国連レポートによると、世界中で12億の人々が安全な飲料水を手にすることができない。地球温暖化や人口爆発が水の欠乏をますます重大な問題にする。水不足という危機が人々の間に不平等に配分されているため、貧しい人々のはその生存の危機に直面している。近年では、世界中で水を争う多数の紛争が起こっている。 第2に、三つの水危機(新鮮な水の供給の縮減、水への不公正なアクセス、企業による水の管理)は、地球および私たちの生存に対する最大の脅威である。今後、私たちが正しい方向に行動様式を変えなければ、国家、貧困者と富裕者、公益と私益、都会の人々と地方の人々、新鮮な水の不足をめぐる紛争が激化し、潜在的戦争が現実化するおそれがある。 第3に、グローバルな水不足は多数の人々を貧しく傷つきやすく安全でない生活に押しやる。グローバルな水の危機は、物理的な入手可能性ではなく、権力、貧困、不平等に起源がある。人々は水に対する権利があり、水へのアクセスと公衆衛生が得られないことは、生活を脅かし、機会を奪い、人間の尊厳を蝕む、剥奪の一形態である。環境に対する有害な政策ならびに実践は犯罪の一形態として特徴づけられ、グローバル化に伴い生じる環境に対する有害行為あるいは犯罪に対して、特別な注意が向けられなければならない。
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