平成23年度は「森林伐採による環境破壊と生物多様性の危機」および「原子力発電所事故による放射能汚染と環境破壊」について調査研究を実施した。 第一に、森林伐採による環境破壊が著しく、それに伴い生物多様性が危機にさらされているマダガスカルの現状と問題点について調査研究を行った。毎年10万~20万haに及ぶ土地が森林破壊により失われ、特有の多くの植物や動物が絶滅の危機に直面している。東部には南北に伸びる森林地帯があり、マダガスカルに現存する最後の低地熱帯雨林が数種見られるほか、広大な手付かずの原生林が存在しているが、この森林地域は焼き畑農業や森林伐採による大きな被害を受け、生物多様性が脅かされている。地域及び国家レベルで取り組みが始まっているが、必ずしもその効果が上がっているとは言えない状況である。 第二に、福島第一原子力発電所の事故をきっかけとする放射能汚染による環境破壊の現状、将来予測、問題点について調査研究を行った。福島第一原子力発電所の事故により、放射性物質が放出・漏出されたことから、放射能汚染により生態系ならびに地球環境が重大な危機に晒されている。これらは産官学の複合体によって犯された環境に対する重大犯罪の一つと考えられる。福島第一原発事故は過去最悪とされるチェルノブイリ原発事故と並ぶレベル7の評価がなされ、世界中で反原発の動きが活発になっている。原子力ルネサンスと称され「万能薬」とされてきた原子力発電所の危険性が明らかになった。また、地球環境の放射能汚染は生態系と地球環境に対する致命的な環境犯罪と考えられ、複雑系グリーン犯罪学・被害者学の観点から、時間と空間を横断する環境犯罪であると考えられる。 これらの研究成果は、国際犯罪学会、ヨーロッパ犯罪学会、アメリカ犯罪学会でそれぞれ発表し、諸外国の研究者・実務家等と意見交換し、国際的な共同研究に発展している。
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