研究概要 |
当初の計画通り、本年は、相続財産の帰属、及び、生前処分と死後処分による財産の処置の可能性、及び、以上に対する相続債権者と遺留分権利者の法的地位を中心に問題の検討を行った。具体的には、相続財産に属する可分債権とその処分の可能性(特に、平成20年度の研究成果としてあげた、藤原正則「無権限者による他人の物の処分と他人の債権の取立による不当利得(1)〜(4・完)」を参照)、死者の請求権の相続により相続人に帰属する損害賠償請求と被相続人の生前処分により受取人((非)相続人)に帰属する保険金請求権との関係(特に、平成20年度の研究成果である、山本哲生「被保険者の有する損害賠償請求権と保険者の代位」を参照)などである。さらに、出版の日付は、2009年4月1日であるが、藤原正則「他人物売買・無権代理と相続-ドイツ法の紹介とわが国の議論との対比」新井誠・山本敬三編『ドイツ法の継受と現代日本法』127頁〜149頁、及び、2009年5月に出版予定の、Masanori Fujiwara, Erbenhaftung des Vertretenen, der den Vertreter ohne Vertretungsmacht beerbt, und des Vertreters ohne Vertretungsmacht, der den Vertretenen beerbt, im japanischen Recht, in Festschrift fur Dieter Medicus zum 80. Geburtstag, Heymann, 2009, S. 109-S. 123は、本年度の研究の成果であり、責任の承継と権利取得による追完という角度から、従来2のわが国の議論を再点検したものである。遣留分とその予防法学に関する検討も進めているが、現在のドイツでの相続法改正をにらんで、最終的な成果の発表は現在はその準備に止めている。
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