研究概要 |
本年度においては, CISGが近くわが国について発効することを踏まえて、その全体構造を指し示すための作業に重点をおいた。そのなかで、次のとおり、第1〜第3の課題の研究成果を織り込んだ。 第1の課題(法解釈学的研究(1))であったCISGの契約責任の体系的構造の研究については、契約解除権および危険負担、不能法理の否定のインパクトについて, その構造を解明し, 複数の媒体において研究成果を公表するとともに, 債権法改正との関係についても言及した。第2の課題(法解釈学的研究(2))であった「契約違反への債権者の関与が有する免責的効果」については、その構造を明らかにする作業を行い、簡単に研究成果を公表したが, 詳細な研究成果の公表は, 当初の計画どおり次年度以降の課題である。第3の課題(法解釈学的研究(3))であった、CISG解釈条の諸論点の研究については、取引実務上、最初に避けて通ることのできない問題であるCISGの適用範囲について重点的な検討を行い、また、契約締結プロセスの規律について研究成果を公表した。 さらに、次年度以降に予定していた、国際商取引における《共通私法》の多層的な生成過程の実態解明に関わる研究を若干前倒しして行った。 第4の課題(翻訳(1))であった、「UNIDROIT国際商事契約原則2004」の翻訳については、その一部を完成し、「インターカレッジ・ネゴシエーション・コンペティション」(2008年12月開催)に参考資料として提供したが、全体の完成には至らなかった。第5の課題(翻訳(2))であったCISG-AC意見の翻訳については、第5号および第6号について、その全文を完成し、公刊した(ただし、第6号については、研究代表者以外の者が翻訳を担当し、研究代表者はそのサポートに回った)。
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