研究課題
本研究の最終年度に当たる本年においても、CISGの全体構造を債権法改正と関連づけて解明する作業及び国際商取引における《共通私法》の規範内容及び生成過程の分析を行った。前者については、第1の課題であった危険負担の研究については、日本民法との比較を行う研究は年度内の完成にはいたらなかったものの、UNCITRALが刊行するCLOUT Digestの2012年改訂版において、CISGにおける危険移転規定とそれをめぐる裁判例の状況についての執筆を担当し、成果を公表することができた。これは今後、内外で参照されることになる文献で、重要な意義を有する。第2の課題であった、CISGの基礎にある一般原則としてFavor Contractusを位置づける作業については、一区切りをつけることができ、その成果を英文と邦文で公表した。これも、現時点の内外における議論水準の到達点を示すことができたと考えている(もちろん、これからはその先が問題となる)。第3の課題(その他の解釈論的研究)としては、判例解説を1本執筆した他、CISG第5条に関するCISG-AC意見の執筆と、日本の契約法に関する英文概説書の共同執筆の準備を進めた。後者については、当初に計画したICCに関する具体的研究の進捗は遅かったが、「UNIDROIT国際商事契約原則2010」の翻訳を行った他、アジアにおける《共通私法》の規範内容の具体化について研究を進め、大きな進捗があった(関連論文1本執筆)。また、CISGの非締約国であるブラジルとタイにおいて、その締結を促進するためのセミナーを実施した。なお、本研究の問題意識を更に発展させ、《私法統一》一般について共同研究を平成24年度から開始することとなり、その準備も行った(科学研究費基盤研究Bとして採択済み)。
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NBL
巻: 975号 ページ: 84-92
国際私法判例百選<第2版>(別冊ジュリスト)
巻: (印刷中)
民法学における古典と革新(松久三四彦=藤原正則=須加憲子=池田清治【編】)(成文堂)
ページ: 255-292
Towards Uniformity : The 2d Annual MAA Schlechtriem CISG Conference(Ingeborg Schwenzer & Lisa Spagnolo (eds.))(Eleven International Publishing)
ページ: 165-179
Website of the International Institute for the Unification of Private Law
ページ: 1-42
http://www.unidroit.org/english/principles/contracts/principles2010/translations/blackletter2010-japanese.pdf
http://www.juris.hokudai.ac.jp/~sono/cisg/