今年度は、「後期年少者」のうち初期成年者につき、これらの者への支援の現状と正当性を検討した。実際の作業としては、ロースクール生(専門職大学院の一つである法科大学院の学生)に焦点をあわせて、その生活の実状を学部生と対比しつつ明らかにするとともに、ロースクール生に対する支援制度のいくつかをとりあげた。具体的には、東京大学法学部・法科大学院でアンケート調査を行うとともに、法科大学院生が利用可能な奨学金・授業料免除の制度のほか、学生寮や子育て支援という現物給付につき調査を行い、その結果をとりまとめて分析を加えた。この作業は、ロースクールのゼミ生たちの協力を得て、2010年4月から7月までの間に行い、その成果は、2010年3月に羽鳥書店から『22+歳の支援-ロースクール生が考える大学院生の「支援システム」』として出版した。この作業を通じて、いくつかの制度を「自律システム」としてとらえることができること、支援システムのあり方は学校によって多様でありうること、「支援」の正当化原理には複数の考え方がありうるかこと、などが明らかになった。対象はロースクール生に限られ、大学院生一般には及ばなかったが、上記出版物を通読すると、一定の示唆が得られるものと思う。なお、前年度・今年度の調査結果を総じて見ると、法的な観点からの「後期年少者」像を構築しうるものと考える。
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