平成22年度には、次の3つの作業を並行して進めた。 第一に、平成21年度までにおこなった権利観に関する調査・検討を進めながら、決定権的権利観の基礎づけと内実の具体化をおこない、その成果と人格権法の一般的な理論枠組みとの接合をはかった。その成果の一部として、11所掲の「基本権利的保護与私法的作用」、「基本法による権利の保障と不法行為法の再構成」を発表した。 第二に、平成21年度までにおこなった社会的人格権・身体的人格権・精神的人格権に関する調査・検討を継続しつつ、(1)であきらかにした一般的な理論枠組みの各論的な検討を進めた。その成果の一部として、研究代表者が京都大学法学部にて平成22年度におこなった民法第四部の講義(債権各論を対象とする)のための講義案として、『民法講義ノートIV債権各論(下)』(とくに62~127頁)を作成した(この講義案は平成23年度に有斐閣より公表する予定である)。また、その成果の一部を労働契約法の分析に接合したものとして、11所掲の「民法の現代化と労働契約法」も発表した。 第三に、生活妨害・公害に関する主として民法学における従来の議論動向と判例法の動向、ならびに、環境権に関する憲法学および民法学における議論動向を調査・検討し、環境的人格権という観念の可能性について検討をおこなった。その成果の一部は、上記の『民法講義ノートIV債権各論(下)』(とくに101~109頁・198~204頁)において取りまとめた。
|