今年度は主に、専門家賠償責任保険に関するわが国の裁判例について検証を行うこととした。専門家賠償責任保険の一種である建築家賠償責任保険における保険事故に該当するか否かが争われた名古屋高判平成20年6月24日金融・商事判例1300号36頁についての判例研究を金融商事判例1306号に掲載した。建築家賠償責任保険に関する裁判例は多くなく、この裁判例を検討し、最近の同保険の状況について、検討を加えることは社会的にも意義のあるものと考えられる。 上記裁判例以外に、弁護士賠償責任保険に関する裁判例、税理士賠償責任保険に関する裁判例や実務上の問題点について訪問調査による実務実態を踏まえて検討を行い、税理士職業賠償責任保険において、約款改定前に生じた税制選択上の過失について、更新契約に係る税理士特約1条項5条2項が適用され保険者の免責が認められた名古屋高判平成20年10月31日金融商事判例1311号掲載予定について、判例研究報告を立命館大学商法研究会(平成21年3月7日開催)で行った。当該判例研究は、損害保険研究71巻1号(2009年5月25日)に掲載予定である。税理士賠償責任保険の免責条項について裁判例を検証することによって、その妥当性を検証している。弁護士賠償責任保険に関しては、被保険者である弁護士が自ら訴訟代理人となった場合についての問題についての初めての裁判例について検討を行っている。この検討内容は速報判例解説(TKC)に掲載をすることを予定している。
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