研究概要 |
本研究は、監査役監査と内部統制システムとの関係について、その在り方を模索しつつ、監査役制度の有用性を実証的に論証しようとするものであり、今日ほどその制度的存立を問われる時代はないと確信している。そのため、3年間の継続研究を通じて、監査役制度に関する従前の研究を基礎として、新会社法の下における監査役制度の意義と役割に関する独自の見解を構築し、さらに体系化を図るとともに、監査役監査と社内に構築される内部統制システムとの関係について、一方において、歴史的ないし比較法的研究を試みるとともに、併せて他の学問領域(会計学・監査論・経営学等)にふみこんだ検討を進めた。また同時に、他方において、監査役および内部統制システムに関わる社会的実態の調査をふまえて実証的検討を試みた。そのため、内外の最新研究の収集と分析に当たったが、同時並行的に、可能な限り、論説・論文等を著述した。とりわけ、本年度は、中央経済社が企画した会社法のコンメンタール・シリーズ、『逐条解説会社法』第5巻(予定)において、監査役全体の規定(会社法381条~389条)に関する分析と検討を担当し、本研究テーマである内部統制システムとの関わりを基調として監査役全体を{府轍する詳細な論述を書き上げた。さらには講演・研修等を通じて、会社法務関係者に対し監査役制度の有用性に関する認識を新たにするための啓蒙活動も行った。とりわけ,社団法人日本監査役協会を通じて,数多くの大会社の監査役と直接に面談し,現実の監査実務の問題点を聞き取り調査するとともに,併せて,彼らに対し監査役制度の有用性を説くという活動は意義があったものと思う。
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