今年度の大きな特色は、2009年9月1日からドイツで新しい家事手続法(Das Familienverfahrensrecht---FamFG)が施行されたことである。本法により、従来、後見裁判所と家庭裁判所とに分かれていた事件手続が、家事事件については家庭裁判所に集約され、後見裁判所は廃止されるに至った。この手続法改正の目的の一つに、父母離婚後の面会交流紛争の解決の迅速化があげられていた。日本での紛争の長期化傾向に比較すると、紛争解決期間は短かったにもかかわらず、法改正によって制度上の対応をしたのである。この背景には、子どもの時間感覚の尊重という考え方と、この考え方に基づくと親子関係を断ち切らないようにするためには別居している親との交流を保ち続けることが重要だという発想が存在する。 上記の考え方に基づくならば、できるかぎり親子間の交流を確保するために、交流を補佐する制度も重要である。いわゆる付添いつき面会交流である。 個別の事例ごとに面会交流が子の福祉に合致するかを判断する日本法と、まずは面会交流を前提にして子の福祉が危険にさらされるときにのみ面会交流を制限するドイツ法のいずれが子の発達にとって好ましいかを検証するのが次年度の課題である。また、裁判所の下した判断の執行方法についての比較検討も行わなくてはならない課題であることが明らかになった。
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