本研究は、東アジア諸地域、とりわけ韓国・台湾における最近の会社法改正の動向と実務上の問題点を解明することを目的としている。台湾では2001年、2005年に改正が行われ、韓国でも2006年に会社法改正試案が公表されたところである。いわゆるグローバルスタンダードの波は各国・各地域の経済に影響を及ぼし、その流れの中で会社法の改正が行われており、キーワードは定款自治とコーポレートガバナンスのあり方についてであると考える。東アジア諸地域で会社法がどのように運用されているのか、アジアにおける家族的経営とグローバル化した会社法制がどのように折り合いをつけているのか、さらには、外資からの敵対的企業買収にどのような備えをしているのか等について、現地研究者との連携を図りながら考究をおこなった。台湾会社法については、台湾大学へ赴き、現地研究者へのインタビューを実施し、(1)証券取引法による社外取締役制度と台湾の家族的経営への影響、(2)2005年会社法一部改正による株主総会の電子化、(3)会社法改正に関する今後の動向について、聞き取り調査を行なった。韓国会社法については、(1)執行役員制度、(2)取締役の利益相反取引の厳格化、(3)企業防衛のあり方について、建国大学校(ソウル市)の研究者ヘインタビューを行なうとともに、本学において「東アジア地域経済の法的諸相-韓国経済の特性と会社法改正の動向-」というシンポジウムを開催し、その内容を報告書としてまとめた。また、11月、井上と後藤は、慶北大学校(大邱市)での国際シンポジウム「東アジア法文化圏の共通性と異質性」において、それぞれ報告を行なった。また、井上はアジア文化研究所主催の研究会において「グローバル化した会社法と経済危機-台湾・韓国の会社法を題材に-」と題する講演を行ない、研究成果を報告した。
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