研究の目的は、アジア地域で行われている会社法の改正について考究することである。最近の改正により、会社の機関設計やコーポレートガバナンスの自由度が増した。しかし、実際、会社法がどのように運用されているのか、アジアにおける家族的経営とグローバル化した会社法制がどのように折り合いをつけているのか、さらには、外資からの敵対的企業買収にどのような備えをしているのか等について、わが国の研究者が、アジア経済の視点から分析・検討することの重要性についても意識し、研究を進めている。 研究実績についは、平成21年度、韓国・台湾の会社法改正の動向について調査を行った。 具体的に述べると、韓国会社法については2006年に公表された改正試案の議論以降、いくつかの検討が行われているようであるが改正にまでは至っていないのが現状のようである。その中で改正作業が進みつつあるのが企業買収の対抗策としてポイズンピルの導入を図ろうとする動きであり、これに関する立法動向等の考察を行った。 台湾会社法については、2009年に取締役の欠格事由の修正や最低資本金制度の撤廃の検討及び2001年、2005年会社法改正の後の課題の検討を行った。株式会社の機関、特に、株主総会と取締役会との権限配分が2001年改正により大きく変わった。2001年改正前に株主総会は万能の機関とされていたが、当該改正により取締役会は会社事項の決定権限を包括的に与えられることになった。その結果、取締役会と株主総会の権限分配が問題となり学説上争いが生じている。株主総会の権限を縮小しながら取締役会の権限を拡大する一方、株主権の保護措置が図られた。株主の提案権制度及び取締役・監査役の候補者推薦制度が2005年改正により導入された。しかし、株主権の活性化のための諸制度の利用については、法上多くの制約は課されており、現時点での利用状況は芳しくない。また、台湾会社法でも株式譲渡自由原則は採用されている。しかし、中小企業においては実務上、会社と株主との間に株式譲渡制限契約が締結され、会社の従業員への譲渡のみ可能な旨の条項が置かれる。法人代表制度の問題についても台湾特有の現象を有するので検討を行った。
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