平成22年度は、台湾会社法、韓国会社法について考察を加えたところである。台湾会社法に関して株主構成の側面から企業統治についてアプローチした。上場企業においても創業者一族である支配株主が会社の実質的支配権を有する台湾会社の統治のあり方について、法人株主の代表者による法人株主の代表人による取締役・監査役の選任について考究した(会社法二七条)。一族が投資会社を設立し、その投資会社から取締役と監査役を同時に派遣する。そのため取締役を監視する取締役会の機能と監査役の監視機能が効かない事案が指摘されている。台湾においては支配株主のチェック機能を高めることが議論されている。台湾では支配株主が私的な利益を追求するような行動を監視・防止する有効な方法として、2002年証券取引法改正で独立取締役会の導入とディスクロージャー規定の厳格化が図られ、独立取締役会の導入が新規上場企業に義務付けられたが、未だ不十分なところも多く、わが国と同様に企業経営の透明性が議論されている。 韓国会社法については、まず、2001年改正において、一人会社の設立を許容、株式の包括交換・移転制新設等が図られたこと、2009年改正で、会社の各種公告、通知、議決権等株主の権利行使に電子文書の使用を許容、最低資本制廃止、小規模会社の特例新設(取締役の定員緩和、株主総会手続き簡素化等)が図られたことについて理解を深めた。現在の改正議論として、2010年改正案である新株引受選択権の導入について理解した。わが国の新株予約権を模範にしたものである。韓国では、この法案の成案の段階では資本市場の活性化を妨げる恐れがあるとの理由で反対が強いとのこと。韓国においても敵対的企業買収からの防衛に関する法制度の整備が図られつつある。
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