1本年度も昨年度に引き続き、学士課程における法学教育の類型的考察を行った。 本研究者は、アメリカにおける学士課程法学教育の分析から、プレローモデル、リベラルアーツモデル、学際モデル、職業教育モデルの4モデルを析出した。そこで、本年度はこの4モデルが日本においても有効に機能しているかを検討するため、日本における法科大学院制度発足以降の法学教育の目的及び内容を検討した。 2その結果、法学部における法学教育は、法科大学院のみで法学教育を行い法学部制度のないアメリカとは異なり、学士教育課程における法学教育の内容についての本格的な方法論的考察を未だおこなっておらず、従来と同様のリーガルマインドの育成を目的とするという抽象的な目標を掲げる法学教育を行っており、上記4モデルのいずれかを採用するという意識的な学部はほとんどないことが明らかになった。 3その理由としては、法学部を卒業して企業に就職したり、公務員となって法的判断に関わる職務を担当する卒業生が多いことから、それらの者に対する基礎的な法学教育を行うという任務には変更がないことがあげられている。 4もっとも、法科大学院発足以降の法学教育について検討を加えている学部も多いが、卒業生の進路の多様性、法科大学院制度の将来増の不明確さ、等により、学部として統一的な方針に基づいて教育の方向を示している箇所は少ない。この点は、法科大学院制度発足に伴い法学部を廃止した韓国とは対照的である。それ故、明年度は韓国における法学教育についての検討をし、比較を進める予定となっている。
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