研究概要 |
年金基金や投資信託などは資金提供者から資金を集めこれを運用している.これらに加え,カストディなど株主名簿上の株主と真の株主が異なるケースが多く見られる.上記の場合,名義株主と真の株主とが異なるものの,名義株主の背後には実質的な株主が存在している.これらの場合,誰が議決権を行使するかについては場面によって異なっている.実質的な株主が名義株主に指図する場合もあれば,名義株主が行使する場合もある.しかし,誰がどのように議決権を行使するかは,上場会社にとっても実質的株主にとっても重要な問題である. そこで,これに関連し21年度に取り上げたテーマの一つは,ノミニーの議決権代理行使を制限するNYSEの規則改正である.アメリカでは古くからノミニー制度が利用されており,一定の場合,ノミニーが真の株主に代わって議決権を行使できる.ところが,昨年,ノミニーの議決権代理行使を規定したNYSE規則452条が改正された.改正前はcontestでない取締役選任議案について,ノミニーが議決権を代理行使することができた.改正後,取締役選任議案はどのような場合でもノミニーが自由に代理行使できないこととなった.21年度の研究では,改正案が提出された背景などを含めこの改正について詳しく調べ,考察した. また,21年度は,議決権行使結果の開示についても取り上げた.企業内容等の開示に関する内閣府令により,株主総会にける議案ごとに賛成,反対,棄権の票数までを臨時報告書に記載しなければならないこととなった.21年度の研究では,議決権行使結果の開示に関連し,電子的方法によって実質的株主が議決権行使できる制度である議決権電子行使プラットフォームを紹介した.
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