本年度は、「議決権行使結果の開示」、「アメリカのコーポレート・ガバナンス改革」、「個別株主通知とは何か」と題する3本の業績を発表した。昨年3月、開示府令が改正、施行され、議決権行使結果の開示と役員の個別報酬の開示が義務付けられた。上記、「議決権行使結果の開示」は新たな改正についての研究である。議決権を行使しうる名義上の株主がどのように議決権を行使したかを開示することは、資金提供者である真の株主にとっても、重要な改正であるため、新たな制度を分析し考察した。 また、昨年成立したアメリカの金融規制改革法(ドッド・フランク法)には、コーポレート・ガバナンスに関連する多くの規定が盛り込まれており、これを考察することは、日本の制度との比較の観点からも不可欠であるため、これについて「アメリカのコーポレート・ガバナンス改革」を発表した。ドッド・フランク法にも、ノミニーブローカーが真の株主の指示がなければ、議決権行使できないものの言及がある。 「個別株主通知とは何か」では、2009年から始まった株券電子化に関連し、その後に発生した問題について、判例を分析した。振替制度下にある振替株式について少数株主権等を行使する場合、個別株主通知がなされた後、一定期間に行わなければならない。しかし、この個別株主通知が一般の株主に周知されておらず、証券会社窓口での対応が混乱し、また、個別株主通知の取扱について、高等裁判所の判断も解釈が分かれた。そこで、個別株主とは何か、どういう問題があるかについて、研究を行った。
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