平成21年度は構造・実態分析を進め、国内外で1次・2次資料を収集し、環境をめぐる権限の分散と省庁間紛争の頻発という課題に対して、CEQとEPAの連携がどのように機能しているかを検討し、次のような知見・示唆を得た。1.EPAにおいて、いくつかの連邦省庁の関係者と意見交換会を行った結果、連邦省庁がCEQに対して、より一層のリーダーシップの発揮を希望していること等がわかった。かかる希望の背景となっているのが、横並びの複数の省庁に環境をめぐる権限が付与されていることであり、そうした状況で特定の省庁がリーダーシップを取るのは難しいとのことであった。2.一方、CEQでのインタビュー調査からは、同機関が新政権の下で、地球温暖化対策について、一層の省庁間調整を行う等の情報を得た。具体的には、環境影響評価手続において、連邦行為の温暖化への影響をどのように評価するかに関するガイドラインの策定を検討中とのことであった。1.については、既存研究において、NEPAシステムへの「連邦省庁の側からの視点」が明らかにされてこなかったことに鑑みれば、興味深い知見であると考えられる。また、2.は、わが国が省庁レベル(環境省)で対応しがちな問題を、それよりも上位の政治レベルで行っている例であるが、そのように対応する主たる理由は、当該対応が「省庁間調整」の一環であるという事情によるものと考えられる。かかる知見は、権限の分散を前提とした環境行政組織のあり方、具体的には、環境の「司令塔」の整備のあり方という論点の存在を示唆している。
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