最終年度である平成22年度では、これまでの考察結果を総合し、その成果を社会に見えやすい形で発信することを試みた。具体的には、CEQの機能に関するこれまでの考察結果を踏まえ、生物多様姓の確保という具体的な政策課題に着目し、それをめぐる権限の分散と関連政策の未統一という課題に対しても、当該機関(=CEQ)が政府のトップレベルから「司令塔」として効果的な働きかけを行い、調整のとれた政策発展(例:合衆国連邦政府における生態系管理の導入)を促進したこと等を明らかにした(拙著『生物多様性というロジック-環境法の静かな革命』(勁草書房・2010年)として刊行した)。この知見は、わが国の生物多様性管理法制におけるトップの強化のあり方を考える上での具体的な材料となる。さらに、平成22年度には、平成20-21年度にかけて実施した史的分析の結果を、新たに渉猟した資料の分析結果から捉えなおし、CEQとEPAの相互作用を基盤とするアメリカの環境行政組織の原型がニューディール期に現れていたという立論の手掛かりを得ることができた。かかる立論は、これまでのアメリカ環境法・環境政策学研究で看過されていたものであり、その検証作業を進めることが今後の課題として示された。当該課題については、『環境と正義』(日本環境法律家連盟ニュースレター)掲載の連載記事(拙稿「環境の司令塔の理論と組織」(2011年4月現在も連載中))で予備的なものを示している。
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