平成21年度にも、20年度に入手できなかった資料の収集を進めた。Multimedia und Recht誌のバックナンバーを、すべてではないが購入することができた。関連する他雑誌の最新刊も購入した。引き続いて単行図書の収集にも気を配り、発注した。 21年度には、インターネット上の表現による名誉毀損罪の成立要件について、被告人の弁護人として、従来とは異なる判断枠組みをとる地裁判決を導いた弁護士に話を聞くことができた。事件に直接かかわる法的問題だけでななく、インターネットに関する最新の諸事件ついて詳しい知見を得ることができた。 残念ながら、21年度にはこのテーマについて直接の研究成果を挙げることはできなかった。これは、21年10月の日本公法学会での報告を依頼されるという予定外の大きな仕事が入ったことによるところが大きい。この報告は、「基本法によ行政統制」をテーマとするものであるが、その一環として高度情報通信ネットワーク社会形成基本法、いわゆるIT基本法の立法過程や報告状況を調べることになり、インターネットについての政府の対応方針を知ることができた点では、本研究にも資するところがあった。また、11.の〔図書〕で挙げた共著中の論文「自由」『濫用』の許容性について」は、表現の自由などの人権が共和制廃棄のために濫用されたと理解されることの多いワイマール期ドイツの法状況について見直しを求めるものであり、自由と秩序の相関という問題意識において本研究とおおいに関連する。
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