最終年度となった平成22年度も、これまで収集できなかった資料の購入に努め、予定していた雑誌のバックナンバーはほぼそろえることができた。関連する単行図書の収集も進めた。 直接本研究課題を対象とする論文は、研究期間内に完成することができず、現在も執筆中である。これは、一つには、平成21年度の日本公法学会に引きつづき平成22年度にも日本法哲学会で報告を求められるという、予想外の仕事が入ったことによる。とはいえ、日本公法学会での報告はインターネット関連の立法を対象として含み、本研究課題とも関連する。この報告は本年度論文として公表した。また、日本法哲学会での報告も、インターネットによって可能になったパブリック・コメントなどの市民の意見表明を政治・行政がどのように取り入れていくべきかという問題を扱っており、本研究課題にとっても有益であった。 執筆が遅れたもう一つの理由は、文献を読み進むうちに、今日的問題についてきちんとした立場を示すためにこそ、自らの表現の自由論の基礎を問い直す必要性があると改めて痛感したことである。そこで、インターネット上の表現についての論文にとりかかる前に、現在の表現の自由法理の歴史的成立過程をもう一度整理しなおす作業を行った。この問題につき日本語と英語で論文を執筆したが、日本語論文はまもなく公刊される予定である。 このような事情があるが、当然本研究課題の直接的成果を論文として発表する必要があることは十分理解しており、現在早急に作業を進めている。近日中に完成できる予定である。
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