通信と放送の融合に伴うコンテンツの伝送路多様化は、著作権法における放送関連規定の統合を促す契機となろう。総務省が2006年に取りまとめた『通信・放送の在り方に関する懇談会報告書』においても、「現行の著作権法には、実態にそぐわない規定が散見されることから、放送・有線放送区分を統合し、伝送路の多様化に対応した包括的な規定とする等、利用者利便や技術革新に的確に対応した抜本改正を行うべきである」と提言されている。 また、2006年12月の著作権法改正時における衆議院文部科学委員会の付帯決議にも「近年のIPネットワーク技術の進歩による伝送経路の多様化に鑑み、著作権法第二条第一項第八号に規定する放送、同項第九号の二に規定する有線放送及び同項第九号の四に規定する自動公衆送信については、現在の伝送経路等による区分を見直し、伝送経路の多様化に対応した包括的な規定に改めることを含め、速やかに検討を進めること」とある。 伝送路の多様化に対応した包括的規定を検討する際には、英国著作権法が大いに参考となる。英国著作権法は、2003年の改正により、放送の定義に関する規定(第6条)を改め、「有線放送」を「放送」の概念の中に含めることとした。つまり、放送と有線放送の区分を廃し、両者を「放送」という概念に統合している。そして、伝統的な放送としての特性をもつインターネット送信は、放送としての資格を有するとされ、IPマルチキャスト放送も「放送」と解釈される。英国著作権法のように簡素で柔軟な制度設計であれば、IPマルチキャスト放送のような技術革新に対しても的確に対処することが可能となる。 平成22年度は、こうした英国著作権法の規定を参考に、わが国の著作権法の放送関連規定の統合を検討した。
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