本年度は、「持続可能な発展」概念の歴史的経緯を検討するため、特に「環境と発展に関する世界委員会報告書(Our Common Future)」以前の国際環境法形成期に注目して、分析を行った。その結果、1960年代から70年代にかけて新独立国が積極的に展開した新国際経済秩序(New International Economic Order)や「発展の権利」の主張の中との関連性を見つけることができた。この結果に加えて報告書採択以降の国連での同概念の評価、とりわけリオ会議からミレニアム開発目標採択に至る同概念の見方に注目する必要がある。 また、持続可能な発展概念を支える法原則を、多数国間環境レジームと国際貿易レジームのそれぞれから抽出し、その実定法化や規範化の現状を検証するために、主要な国際環境法の文献および関連する国際機関の公式文書を収集した。特に生物多様性条約(カルタヘナ議定書を含む)の関連文献を中心に収集したが、これまで研究を行ってきた気候変動条約(京都議定書を含む)と密接な関連性を持つことが明らかになり、その問題に関して両条約の締約国会議がリエゾン・グループ(Liaison Group)を形成するなどして、大きな役割を果たしうることがわかった。今後は、これらの締約国会議の相互関連性(Inter-linkage)に加えて、貿易レジーム(WTO)の貿易と環境委員会や発展レジーム(国連持続可能な発展委員会)における議論状況を加味しながら、持続可能な発展概念の法的意義について実証する必要があることを再確認した。
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