本年度は、(1)1990年代以降の「持続可能な発展」法の動向と(2)「持続可能な発展」に関する主要アクターの基本的立場の理解に関する分析を行った。 特に(1)に関連して、気候変動条約締約国会議第15回会合(コペンハーゲン)におけるポスト京都議定書をめぐる国際交渉についての検討と生物多様性条約における遺伝資源へのアクセス及び利益配分に関する国際レジームの現状についての分析を行った。両条約は、1992年リオ会議を期に採択された条約であり、同概念を基本理念に据えている点でも共通点が見られる。前者については、京都議定書後の国際制度について、持続可能な発展の達成支援を条件とするクリーン開発メカニズムの制度の再考が必要であることを再認識した。後者については、2010年のCOP10(名古屋)での新議定書採択の動向を踏まえつつ、実効性のあるレジームの構築にはなお課題が残されていることについて論文にまとめた。なお上記の検討の過程で1990年以降も2000年のミレニアム・サミットを契機として国連及び関連会議・関連機関における持続可能な発展概念の理解に変化が見られるとする見解があることがわかった。 (2)に関しては、上記の分析の過程で同概念に対する欧州連合と米国の立場の違いはかなり鮮明になったといえる。また持続可能な発展概念を開発計画の基本方針に置く途上国と環境法の基本原則とする先進国の認識の違いもかなり明確となった。しかしながら国際機関相互の理解については、今年度の研究ではまだ不十分であり、最終年度も引き続き検討を継続させる必要がある。特に同概念の解釈について、WTOにおける解釈の変化と2005年世界サミット以降の国連の理解について興味深い分析が海外研究者から提起されている。最終年度はこの分析を踏まえて、持続可能な発展概念の法的意義についてまとめの作業を進めたい。
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